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2008年3月27日 (木)

価格を決めるのは、用紙代? それとも中身? はたまた美しさ? ●干場 

小飼さんの「3分間コーチ」はソフトカヴァーにすべきだったという書評を受けて書いた記事(3月24日付)の最後に、なにげを装って書き加えた一文

あの……「携書」で1575円っていうの、ありでしょうか……?

と、同じ小飼さんのハードカヴァーvsソフトカヴァー論争の記事で引用の栄を賜る(!)こととなった、 gaseidou2さんのブログ「SEの本棚」の「倍出してもペイする?「3分間コーチ」」の記事の中の一文

しかし、この装丁の美しさは、新書では出なかったでしょう。

この二つの組み合わせから展開していった小飼さんの昨日の記事、「誰が講談社現代新書を殺したか?」がとても盛り上がっているようで、冒頭で引用された、わたしの一昨日の記事へのアクセスも昨日の夜から、またまた急増(さっきみたら、同じくgaseidou2さんもブログで「ありえないアクセス数」と書いてらした!)。

小飼さんの挑戦的な問題提起に類するものを期待された方には、ごめんなさい、大いに失望されましたよね!?


現在の講談社現代新書のデザインについては、21世紀という「現代」をどのようにとらえ、それを表現するかという解釈の問題だとも思えますが、小飼さんご指摘の背文字がはげるという点については、新書一般の700円にするために、コストを削りに削っているんでしょうか(ふつうは、必ずしもコストの問題ではないと思うのですが。今度印刷所の方に聞いてみます)。


実際のところ、昔の現代新書やわが社の携書のように、1冊ずつ装丁が異なると、そのたびにデザイン料もデザイン料もかかりますから、それが初版で終わってしまうと、それだけで1冊あたり30円くらいの計算になる。さらに、この業界全体の現在の平均返品率と同じ40%が返品となると、1冊あたりに占めるそのコストは、45円くらいになってしまう。


印刷代、用紙代も同様です。で、本のコストのほとんどは、人件費を除けば、印刷代と用紙代。
なかでも用紙代が半分以上で、増刷になると、さらにその割合は増えます(印刷代は、冊数がふえれば、単価は低下しますが、用紙代は冊数分かかるわけなので)。

 

ふつう新書には、見返し(表紙と本文の間にはってある用紙)はつきませんが、わが社の携書にはつけています。サイズは、新書サイズだけれど、仕上げはソフトカバーの単行本と同じにしてますので。でもまた、ここで、コストがかかります。

この見返しに今つかっているのは、タントといって、ごく一般的な色数の豊富な用紙なのですが、実は、その見返しの色にも、さらについでに申し上げますと、表紙(カバーではなくて、カバーをとった本体の一番外側の紙)の色にも、私、こだわっておりまして、

一般には、廉価の書籍では薄い色をつかうけれど、それを、できるだけ濃い色にして、表紙と見返しとカバーの三種類の色の取り合わせを、できるだけ ファッションの色の組み合わせを意識したもの(グラフィックデザインとファッションデザインでは、一般的なカラーコーディネーションが異なると感じていま す)にしてほしいとデザイナーに依頼するよう、スタッフに言っているのです。

特に理由はないけれど、そのほうが美しいと思うから。

でも、最近になって、どうして一般に、ソフトカバーの実用書などが薄い色の見返しをつけるかわかりました。
ファッション感覚がないのではなく(ま あ、それもある場合もあるでしょうが)、たとえば同じタントという用紙でも、濃い色と薄い色では濃い色のほうが1冊あたりの分量にして、10円〜20円も 高くなるそうなのです! でも、黒と茶色では茶色のほうが高い。茶色をだすための染料の関係とかで。
(そんなことも知らないでやってきたなんて、またまたいい加減な社長ですね……)

いきなりマニアックな話になってしまいましたが、常々思っていたのは、結局のところ、私たちは、

コンテンツにお金を払っているのか、それとも紙にお金を払っているのか

ということです。


そんなの、当たり前だろう、中身に決まっているじゃないかとみなさん、おっしゃると思うのですが、それなら、まったく同じ中身を、ハードカヴァーにしたものと「携書」にしたものと、同じ価格でもいいわけで!?

あるいは、同じ208ページの「新書」でも、500円のもあれば、1000円のもあれば、5000円のもあるみたいな?

でも、上記は、結局、競争がないという前提でのお話で、どうしても、この著者のこのコンテンツでなければだめ!というほどの価値あるコンテンツなら、複製の手間とコストと折り合うまでの範囲において、コンテナーに関わりなく価格はつけられるかもしれませんが、
現在、そういうコンテンツはなかなか少ないし、あったとしても、それこそ会員制など、一般の人には入手できない情報となるでしょうし、そうでなければ、 あっという間にまねっこ本がでるわけですから、結局、価格競争になって、

その結果が、不思議な横並び価格、あるいは、とどのつまりが、ページ数と価格の正 比例状態なのでしょう。


もちろん、できるだけ多くの方にお読みいただくために、安く提供することができれば、結局はその方が著者も出版社も書店さんも、読んでよかったと思ってくださる読者のかたもみんなWINWIN。

でも!

内容がものすごく希薄でも、とりあえず、厚い紙をつかってつか(厚み)をだし、すごく大きな字でページを埋めて、はい、1400円 です! 一方、質量共に読み応えのある発見のある本でも、このぐらいの厚さならまあ、1400円かな、みたいな……。

そういうのをみると、やっぱり本の価値は 用紙代なのか?!と、言いたくなったりしませんか?!


 

あっ、ただし、これ、一般のソフトカヴァーのことです。新書や携書もふくむソフトカヴァーのこと。それ自体、「モノ」としても美しいハードカヴァーや一部のソフトカヴァー、ページをめくるたびに幸せな気分になれるような本文用紙やそれにふさわしい本文レイアウトの本は別! これはもう、ジャケ買いというか、造本と中身が一体化した本の世界もあって、それもまたたのしからずや!

ところで、大手製紙会社の大王製紙が、とうとう印刷用の用紙も15%以上値上げすると発表。他の大手も追従する模様。とうとう来てしまいました。
ますます、用紙代の存在感が大きくなりますね……。 

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ディスカヴァーの社長、 干場さんが、 『価格を決めるのは、用紙代? それとも中身? はたまた美しさ?』 として、 コンテンツにお金を払っているのか、それとも紙にお金を払っているのか を問題提起されています。 わたし個人の見解としては、 どちらでもありま....... [続きを読む]

コメント

Ktoさま
おやおや。ライバルに塩を送ってしまったかしら? まあ、出版界がファッションに近づくのは(?)うれしいことです。それにしても、このブログ、どうも、読者の方むけのつもりだったのですが、業界の方にお読みいただいていることのほうが多いのでしょうか? 

ビジネス書ではありませんが、駆け出し編集者です。
他社からしても参考になるので、いつも楽しく拝見しています。
見返しに濃いタント、確かにいいですね。ついいつも無難に薄い色にしてしまうことが多いのですが、カバーによってはマッチしてすごくいいかも!
来月見本の本でさっそく試してみます!

gaseidou2さん、はい、見ました。ありがとうございます!
いつものことながら、まったくもって同感です。

こんばんは、gaseidou2です。

> コンテンツにお金を払っているのか、それとも紙にお金を払っているのか

これに関して、
ちょこっとブログに書いてみたので、
トラックバックさせていただきました。

よければ見てみてください。

sioさま、心強いコメント、ありがとうございます。そして、弊社の本を店頭でもご確認いただき、とてもうれしいです。良質な内容を、美しく、かつ、扱いやすく長持ちするコンテナーにいれるべく、今後もどんどんチャレンジしていきます。sioさんのブログ、拝見しましたが、「理系男!」なのですね? まさか、女性? いずれにしろ、わたしには、??でしたが、そういうの、あこがれます。すくなくとも、気になるブログの更新を自動的にチェックできるようにすることぐらいは、はやくできるようにしたいとおもいます、という初心者の私です。

こんにちは。dankogaiさんのブログとあわせて興味深く一連のエントリを拝見しました。

読者には一冊の本でも、制作するとなるとその何万倍、何十万倍もの金額になるのでしょうから、用紙の選択にはさぞ頭がいたいことと思います。その書籍の内容を良く表したデザイン、かつ扱いやすい/日焼けなどの経年変化に強いetc. となると、新書の一般的な価格や予算内で組み合わせて行き、読者が満足するようなものに仕上げるのは大変な苦労とそれゆえのやりがいがあることとお察しいたします。

正直、御社の新書は最初新書判にしては「高い!」と思いました。しかし、上質と思われる紙(失礼!紙の値段を知らないので…)で装丁され、デザインにも気を配る(新書なのにデザインが統一されていないのは、最初驚きました)ことを思えば、ディスカヴァー携書はかなりチャレンジングな試みだと想像するに至りました。「勝間和代のインディペンデントな生き方 実践ガイド」も「『婚活』時代」も単行本の売り場に平積みされても負けない存在感がありますね。

私はかなり厚めのブルーバックス(もちろん結構なお値段がする本)でも内容が気に入れば買います。それを思えば、購入したい本が1500円する「携書」であってもそれを理由に購入をあきらめる事は無いと思います。(お財布の中にお金がなくてあきらめることはあるでしょうけれども … 本当に欲しければ、すぐ後で買いに行きます)

本は私の「外部記憶」だと思っています。「外部記憶」に必要なのは、日焼けやページの破れなどの経年劣化を最小限にすることと、検索性を上げるための本のタイトル/目次/索引の充実だと考えます。御社をはじめ出版社の方々には、内容の充実と、長年の使用に耐えうる、扱いやすい長持ちする本の制作を(コストとのバランスをとるのが大変であることを承知のうえで)お願いしたいなーと思いますcoldsweats01

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*PROFILE*

  • 干場弓子

    ディスカヴァー・トゥエンティワン取締役社長。魚座。愛知県立旭丘高校、お茶の水女子大学文教育学部卒業。新卒時、世界文化社入社。「家庭画報」編集部等を経て、1984年、ディスカヴァー・トゥエンティワン設立に参画し、現在に至る。夫と中学生の息子との3人暮らし。好きな言葉は、「Tomorrow is Another Day」。スカーレットの言葉です。理想の男性は、レット・バトラー。もしくは、クラーク・ケント(スーパーマン)。夫は、どちらにも、似ていない。


    社長室のメンバー

    田中亜紀社長室チーフ WEB関連&新規事業担当。趣味はバレエ・お酒・銭湯めぐりなど。最近、モツ焼き屋のおひとり様デビューを果たす。

    谷口奈緒美
    社長室 営業推進、web書店管理担当。
    入社4年目、田中チーフと同期。趣味は占いと合コンと舞台鑑賞。エビちゃんと同郷なのが自慢。

    大竹朝子
    社長室 広報・採用担当。新卒入社3年目。社長室末っ子としてノビノビ育つ。好きなものは、お刺身とビール(夏は野外)。