公取の「書籍・雑誌の流通・取引慣行の現状」の資料、ここに注目! ●干場
昨日書きましたように、合宿でゆっくりPCをチェックできないでいるうちに、
公正取引委員会のホームページで7月24日公開の「著作物再版協議会(第8回会合)議事録等」に添付の資料のひとつ、「書籍・雑誌の流通・取引慣行の現状」(080724tenpu01-1.pdfをダウンロード )を紹介した、元書店員の方のブログ「60坪書店日記」の24日のエントリーに、はてなブックマークが536もついていた!
言うまでもなく、そこに書かれていることは、業界の人間なら皆知っていることで(といっても、若い社員は知らないこともあるといけないので、読むように指示しましたが)、もちろん目新しいことはないのだけれど(10年ほど前に、答申みたいなものが出されたときは、どうなるか!?と思いましたが、結局、ほんとは再販制度もうすぐ撤廃なんだけど、とか言いながら、何も変わらないので、ここしばらく、すっかり毎回の報告書を読むのを忘れていました)、
なによりも、こうしたものが、ブログ界で、一般の方のこれほどの関心を呼んでいることに驚いている。そして、いまのままの業界のあり方が、このまま何十年も続くわけがない、と、独自の直取引を貫き、志あるかたがたと、いろいろと模索している私たちにとっては、なんというか、心強い。
さて、資料だが、ときどき、こういうものは、ほんとうの現状とは違っていたりすることがあるのだが、私が知る限りでは、ほんとうに「現状」。まさに、「5分で分かる、出版書店業界!」だ。もし、ご興味があって、まだ読んでいらっしゃらない方は、ぜひ、ご一読を。
特に、後半、「3 書籍・雑誌の流通・取引慣行の問題及び是正の取組」では、これまでときどき、このブログでも軽く触れてきたことも含め、8つの項目に整理してまとめてある。
なかでも、ここで、特に取り上げておきたいのは、次の項目だ。
(6)出版社-取次間の取引条件の問題(新規あるいは中小出版社にとって取引条件か不利)
○ 新規開業した出版社又は中小出版社においては、歩戻しや注文品の支払保留等の取引条件について、老舗出版社又は大手出版社に比べて厳しい取引条件となっており、これらの取引条件についての合理的な基準か明示されていないといった指摘がある。
〔是正の取組〕
↑他の項目は、一応、部分的ながら、〔是正の取組〕が書かれているが、この項目だけ、空白。
さらに、この点については、「著作物再販協議会」の議事録の方でも、次のように記録されている。その部分を少し長くなるが引用してみる。なお、岸井会員というのは、岸井 大太郎 (法政大学法学部教授)、相賀会員というのは、相賀昌宏(小学館代表取締役社長 *小学館は講談社などと並んで、大手取次の株主でもある)だ(興味のある方は、議事録(080724.pdfをダウンロード) の17ページの「自由討議」からを!)。
(石坂座長) それては,岸井会員の質問で、「書籍の取次寡占ではないか、そこをなんとかならないか」ということについてはいかかがでしょうか。
(相賀会員)……また、新規参入の問題は書店というより、むしろ出版社の新規参入の方が問題としては大きく、また難しいと思います。私どもの取次への条件てある卸正味は、定価の68.5%が雑誌で、一般書籍は一応69%、値段が高いのは70や71%。新しい出版社は大体67%が普通で、さらに5%の戻しを要求されますので、62%が現状です。
取次会社への卸正味が70%に近い出版社があるのにも関わらず、新規出版社は62%からさらにひどいときは60%を切ることさえあると聞いております。 取次会社にとりましても新規出版社との取引には大きなリスクが伴うことが理由です。
私どもは仲間内として、仮に出版社を 20年やって実績を挙げながらも条件の好転がなく、いくらやっていても努力は報われない。それはないだろうということで、少しずつそれを取次の社長に話をしています。
実際、上記は、弊社が、直取引にこだわる、いくつかの理由のうちの大きな一つだ。それは単に、自分たちがいい条件を得られないから、ということではない。現在の実力ではなく(実際、合理的な基準が明示されているわけではない)、既得権を守り新規参入を阻害するによる不平等というのは、これからの時代の出版書店業界の発展に、ふさわしい姿だとはとうてい思えないのだ。
(さらに言えば、今回の資料にはないが、公然の秘密(?)として、支払いサイトも非合理に、不平等だ。新刊は、原則、半年後精算なのに、ごく一部の出版社は翌月だというから。書店さんからの集金は翌月だから、……ということは?)
以下、この以外に問題点としてあげられていた全8項目を挙げてみると
(1)委託配本によって書店の希望とは必ずしも関係なく配本されることと、書店は返品が自由である一方、返品リスクを負う出版社と比べてマージンが低く、人材育成や読者サービスの原資が不足しがちなこと。
(2)本来返品不可の買切扱いの注文品すら返品され、それが取次ー出版社間の取引条件における部戻し(取引条件からさらに1〜5%マージンを取次にとられる)、支払い留保などの原因となっている。
(3)委託配本取引と再販契約に基づく取引のため、書店等がマーケティングを行うインセンティブがないこと。
(4)再販契約が当然に用いられていること。さらに、著作物再販適用除外の対象ではない商品をセットにした書籍・雑誌を、再販 契約の対象として定価表示している出版社あること。
(5)委託配本取引における取次ー書店間の決済が、納品分の請求は翌月請求支払いで、返品入帳日とのずれもあって、書店等の資金繰りに悪影響を与え、かつ書店が陳列もしないで返品を行うことになってしまっていたりすること。
(6)新規開業した出版社又は中小出版社においては、歩戻しや注文品の支払保留等の取引条件について老舗出版社又は大手出版社に比べて厳しい取引条件となっており、これらの取引条件についての合理的な基準が明示されていない。
(しつこいようですが、この部分、「合理的な基準が明示されていない」のが大問題です。年商いくらならとかの基準がないため、古いだけでなくダーティなイメージさえ、漂わせてしまいます)
(7)上記(1)から(6)のような取次経由の取引について問題点が指摘されているにもかかわらず取次と取引を行っている出版社や書店等か別途、取次を経由しない取引を行うことは少ない。
(というわけで、弊社は、非常に少ない例外的存在。多分、この資料をつくった会員は、ディスカヴァーのこと、知らないんでしょうね。是正の取り組み例として、アマゾンのe託販売のことしか書いてなかったから)
(8)書店等から返品された出版社の在庫書籍等を値引き販売する取組みがみられるものの、市場がほとんどないため、広がらない。理由は、著者の承諾がないと、出版社も定価を外すことができないとされていることが多いこと。
このほか、同日の資料には、「新聞の流通・取引慣行の現状」(080724tenpu02.pdfをダウンロード) と「音楽CD等の流通・取引慣行の現状」(080724tenpu03.pdfをダウンロード )についてのものもあった。併せて、読んでみて。
ところで、先週の日曜日、テレビで、木内博一さんというのがはじめた、和郷園という千葉の農業の法人のことを観た。農協経由によるさまざまな問題点から逃れて、自分たちで直接、小売店に農作物を卸す。
最初は、奥さんとお店を一軒一軒まわるところから。いまでは、農地の真ん中に、冷凍工場を造るなど、消費者目線で考えることによる、新しい儲かる農業のための、さまざまな試みをし、実際、業績も大きく伸ばしているという。ところが、千葉県以外では、なかなか、農協経由以外のルートで仕入れてくれる先が少なく、それなら海外へと、ドバイでの営業も始めているとのこと。
出版業界は、戦前からの古い体質を残している業界の一つだと思っていたが、考えてみたら、農業はもっとかも。その、仕組み作り、仲間作り、そして、志に、なんだか相通じるものを感じて、一度、お目にかかりたいものだと思っている。




ハテブのつけ方が、よくわからないので、こちらに、「あとで読む」をつけさせていただきます。
ダウンロードしてみました。
投稿: 若だんなat新宿 | 2008年7月28日 (月) 10:10